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ネコ害問題(その1)――恐ろしいトキソプラズマ症   2004/08/23

「餌やりするな」の看板が壊され
た.。これは4回目の被害看板
 先ごろ掲示板をにぎわせたネコ害問題が気になっている。区立浮間三丁目児童公園でノラネコたちに餌を与える人がいて、付近住人が悪臭などに悩んでいるというのだ。どういう被害が生じているかは掲示板のログを参照していただくとして、この問題を少し考えてみたい。

 「特派員」としては当然現場に飛んだのだが、まだ餌やりの人はおろかネコの姿も現認していない。といってもきちんと張り込みをしたわけではない。しばらく公園をぶらぶらしたり、朝晩の通勤ルートを少し変えて公園経由にした程度。ノラたちは警戒心旺盛だから茂みにでも潜んでいるのだろうか。「のらねこにエサをやるな」と抗議する2枚の看板がなければ、ここがホットなネコ害問題の現場とは思えないたたずまいだ。
 問題が生じた根本は安易にペットを捨てる世相であろうし、自己満足で餌やりをする人たちの無神経さだろうが、掲示板にもあるように解決の手立てを見つけ難い。なにか知恵はないものかと、手始めにお役所に聞いてみることにした。

 まずはイヌやネコの被害問題を扱っている役所はどこか。動物愛護管理法というのがあるからその担当役所を調べたが、これが意外にスムーズーではなかった。ホームページではらちがあかず、直接電話で。まず、古い記憶で総務省から。問い合わせに出てきた広報室の若いお姉さんは「ああ、それは厚生労働か農水ですよ」。厚生労働省の広報も「えっ?」。それでも「一寸待ってくださいね」と調べてくれて「それは環境省です」。平成11年に動物愛護管理法が改正されたのを機に動物愛護は総務省から環境省の担当になったのだった。
「環境省ねえ!」とこっちも驚いたが、総務省広報の馬鹿さ加減には腹がたった。

 ようやく探し当てたのは環境省自然環境局総務課に属する動物愛護管理室。「もしもし、北区の谷口と申しますが」と話を切り出すと相手も「○○と申します」と名乗ったあたりはしつけの良い官庁という印象だ。 ちょうどその法律の見直し時期に入っていて動きが出ているということで、教えてくれたのが「動物の愛護管理のあり方検討会」 の議事概要。その第3回(3月17日開催)で<地域ネコ、共同飼養>問題がテーマに上がったという。議論内容そのものの記述は簡単すぎてピンとこないが、付属資料を読んでいて驚いたのはネコに関係する感染症だ。資料は主な感染症として「猫ひっかき病、トキソプラズマ症、回虫症、Q熱、狂犬病など」を挙げている。ネコ起因の狂犬病?と首をひねったが、ぎくりとしたのがトキソプラズマの説明。「感染すると消化器障害や眼疾患など重篤な病気を引き起こすおそれがある。妊娠前期では、流産、早産などをおこすおそれがある。妊娠4ヶ月以降では胎児感染により、視力障害をはじめ脳水腫、精神障害や、水頭症などを引き起こすおそれがある」。

 なんて恐ろしい話だろう。感染の危険度、発症の実際など詳しいことは知らないが、その危険性があるというなら対応が必要だ。あそこは、若いお母さんたちが子供を連れて遊びに来る場所。緑の少ない浮間地区では貴重な空間である。近隣の方々の被害はもちろん、こうした感染症対策は地域全体の問題だ。

資料では「動物への迷惑問題」への対応事例も挙げている。その中で地域ネコ活動(ノラを適切に飼養・管理するために、地域の人の合意と協力のもとで共同飼養すること)に触れて「一定の評価を得ている」とした上でいくつかの問題点を指摘している。その一つとして「ネコのふん尿によって汚染された公園の砂場などで動物由来感染症が発生した場合の責任は誰が取るのか」という問題提起がある。地域ネコ活動はボランティアで行われるわけだが、そこまでの責任を問われるのでは誰もやれないだろう。

なかなか一筋縄ではいかない問題だが、気が付いたのは感染症発生の責任は餌やりの人たちもまた問われるのが理屈だということである。そして、動物愛護管理法は計28条の短い法律で主に「所有者」の取るべき行為について定めているが、ノラに餌を与える人たちは「所有者」に準じて考えていいのではないかということだ。それにしても餌やり人たちを特定しないわけには始まらないのだが、次回、もう少し法、行政的な側面を考えてみたい。

  【関連事項】 都会にふさわしい猫の飼い方